「泥だらけの純情」のリメーク

題名公開日配給監督脚本真美役次郎役
泥だらけの純情1963-02-10日活中平康馬場当吉永小百合浜田光夫
裸足の青春1964- ?韓国キム・ギドクソ・ユンソンオム・エンナンシン・ソンイル
泥だらけの純情1977-07-30東宝富本壮吉石森史郎山口百恵三浦友和
裸足の青春1979- ?韓国 ? ? ? ?
裸足の青春1986- ?韓国 ? ? ? ?
裸足の青春1998- ?韓国TV
ユン・フンシク
キム・ヨンギュ
 ?コ・ソヨンペ・ヨンジュン

「泥だらけの純情」は、藤原審爾の原作であり、映画(小百合版)は名作としていち早く韓国の映画人の目に留まり、リメークされた。正確には、リメークではなく、著作権を無視したパクリである。それが、「裸足の青春」(オム・エンナン版)であり、韓国でも相当なヒット作となったらしい。恐ろしいことに、それをリメークした作品があるという。79年版の次郎役をボクサーに、86年版の次郎役をスタントマンに変えて製作されたらしい。更に、TVドラマにもなっている。それが、「裸足の青春」(コ・ソヨン版と称するより、ペ・ヨンジュン版と言うべきか)で、ヨン様ブームでDVDが受けているそうである。しかも、ノベライズ本も出版され、日本語訳もあるというのは、著作権上問題ないのか疑問を感じる。
さて、小百合版では樺山外交官の令嬢真美とチンピラヤクザの次郎の悲恋物語であるが、百恵版では樺島国会議員の令嬢真美と一匹狼ヤクザの次郎の禁断の恋愛物語となっている。二人が知り合うきっかけは、真美ともう一人の女学生が不良に絡まれているのを通りかかった次郎が助ける。次郎は不良と揉み合ううちに不良のナイフは自分の腹を刺してしまう。後日次郎は、警察に出頭するが、殺人事件を報じる新聞を見た真美が真実を証言して、次郎が釈放される。ツイスト・キム版も小百合版と同じ展開らしいが、百恵版は何と不良から助けられたときから一目惚れで、以後ストーカー行為を続けるのである。警察に真実を話しに行くのも潔白を証明するためでなく、ただ会いたいだけなのである。お嬢様がヤクザを追いかけ回すというのは、とても不自然で興ざめである。
また、小百合版では、二人の仲が親密になって行く過程を丁寧に、しかもスピーディーに描いているのに対し、百恵版はひたすらお嬢様がヤクザの次郎を追いかけ回すのである。結末も、小百合版では、逃避行のうちに赤倉スキー場の雪の中で戯れ、ふとこぼれた睡眠薬を見つめ合い死を決心するシーンから、葬式のシーンに変わる。これは観客の涙腺を刺激するべく監督の手腕であり、涙が自然に溢れてくる。百恵版では、町中で二人一緒にヤクザに刺されて道路の真ん中で倒れたままで終わる。このシーンは長いのに、自動車が一台も通らないのが不思議だ。そして、涙の流れる気配も感じられない。
「泥だらけの純情」は、小百合版が名作として末永く語り続けられるのは確実であり、韓国での映画も名作だそうである。もし、観る機会があれば、「裸足の青春」(オム・エンナン版)を観てみたい。デートの資金稼ぎで、靴の修理にスルメイカを使うのも同じだそうで、逃避行で一時的に借りたアパートで、「王将」を歌う切ないシーンでは、どんな歌を歌ったのか興味深い。


(c) J.Shinshi

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