「おとうと」のリメーク

題名公開日配給監督脚本げん役碧郎役
おとうと1958- ?- ?NTV
 ? 水木洋子香川京子津川雅彦
おとうと1960-11-01大映市川崑水木洋子岸恵子川口浩
おとうと1976-12-25松竹
山根成之水木洋子浅茅陽子郷ひろみ
おとうと1981-08-27〜28NHK
笹原紀明関功秋吉久美子高野浩幸
おとうと1990-04-30TBS
脇田時三寺内小春斉藤由貴木村拓哉
おとうと2010-01- ?松竹
山田洋次山田洋次、平松恵美子吉永小百合笑福亭鶴瓶

幸田文の原作であり、水木洋子の脚本を読んだ市川崑が和田夏十に映画化について意見を求めたところ、大いに薦められたという。その脚本版が1958年にNTVで放送されたテレビドラマであるが、残念ながら未見である。なお、テレビドラマは全て未見であるので、比較検討は中途半端であるのを了承願いたい。
市川崑版は、監督の代表作の一つであり名作として語り継がれている。脚本の構成も大変素晴らしいのであるが、演出についても特出すべき優れたものがある。カラー作品であるがモノクロに近い色調で、コントラストが強調されている。これは、銀残しという現像手法を使っているのである。フィルムは、ハロゲン化銀を漂白処理で除いて現像するのであるが、敢えて銀を残す手法に挑んだ市川崑監督と宮川一夫撮影監督の成果である。また、画面の構図も美しく、映画界でも絶賛された経緯がある。
山根成之版は、水木洋子の脚本を元に完全リメークされたのであるが、優れた脚本であっても監督の力量の差は歴然としているのが証明されてしまった。既に完成された名作を乗り越えるのは、非常に難しいのである。
しかし、山田洋次はこの難題に挑むことになった。主演に吉永小百合と笑福亭鶴瓶であることから類推出来るように、ストーリーは原作に捕らわれずオリジナルで、時代背景も全く異なるのである。主題の姉弟愛は、山田洋次にとってのライフワークである家族愛のあり方を踏襲するものであり、喜劇的要素も加味した傑作を期待したい。


(c) J.Shinshi

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